「○○は役に立たない」について
はじめに
インターネットを見ていると、よく「○○は役に立たない」という主張に対して意見の論争がなされている。
私のいる界隈では○○にはkaggleがよく入りがちである。競プロとか、数学とか、博士号なども見かけたことがある。
おそらく、私が知らない界隈では私の知らない単語が○○に入っては論争を巻き起こされているのだろう。
私はこの類の論争は不毛だと思っており、さらにその原因の99%は主張を発言した人の注意が行き届いていないため発生していると考えている。
そこで、この記事では4つの観点から、なぜ論争が沸き起こってしまうのか、どのような主張をしたら論争が沸き起こらないのかについての私見を述べる。
具体的な事例があると良いかと思い、炎上しそうな文章をあまり炎上しない形に変えるチャレンジも併記する。
チャレンジ
以下の文章をあまり炎上しない形に言い換える
kaggleは実務の役に立たない。
なぜなら実務ではkaggleのような状況は起こり得ないからだ。
観点
1. そもそも主張を発言した人が○○を正しく理解していない
議論の前提が間違っていると、当然ながら論争が起こる。
また、○○の界隈にいる人にとっては、正しく理解していないのに適当なことを言わないでほしい、という負の感情が発生するため、争いが白熱しやすい。
主張する対象については正しく理解を行わないといけない。
今回のチャレンジでは、「実務ではkaggleのような状況は起こり得ない」が正しくない。一番典型的なkaggleのタスクである「決まったデータセットに対してモデルを作成して、精度を向上させる」というタスクでさえ、世の中にはそのような仕事があるのは事実だからである。
まず、チャレンジの主張を以下の文章に変えてみる。
kaggleは実務の役に立たない。
なぜなら実務では複数の会社や部署をまたいでプロジェクトを成功させることが求められているからである。
2. ○○のレベル感を記載していない
○○をどれくらいやるのが役に立たない、と記載されていないケースが多いが、これもまた議論の種であると考えている。
「○○は役に立たない」系のほぼすべての主張は、"○○をやり込みすぎても"役に立たない、あるいは"中途半端な覚悟で○○しても"役に立たないという主張であるのではないか。
前者はサッカーに対するリフティング、後者はアイドルに対するボイストレーニングが該当するであろうか。
今回のチャレンジでは、ある程度やったらもう不要だよね、というスタンスで記載してみる。
Kaggle Masterになるレベルでkaggleに力を注いでも、実務の役には立たない。
なぜなら実務では複数の会社や部署をまたいでプロジェクトを成功させることが求められているからである。
機械学習の知識が必要なのはもちろんであるが、Kaggle Masterになるまでやり込む必要はないと考えている。
3. 「役に立たない」対象を明示していない
大体の事象に例外はつきものであり、対象を全人類にして何かが役立つ・役立たないを主張するのはリスキーだと考えている。
誰に対して役立たないのかを明記して対象を絞り込むことによって、炎上のリスクを抑えることができる。
今回のチャレンジの例外は、「複数の組織と関わらない仕事をしている人」「そのようなポジションは他の人に任せ、自分はモデル作成のみを担当する人」あたりであろうか。
これを踏まえて、以下のように文章を変えてみる。
大企業の中でAIプロジェクトを推進していくポジションの人間にとって、
Kaggle Masterになるレベルでkaggleに力を注いでも、実務の役には立たない。
なぜなら実務では複数の会社や部署をまたいでプロジェクトを成功させることが求められているからである。
機械学習の知識が必要なのはもちろんであるが、Kaggle Masterになるまでやり込む必要はないと考えている。
4. 「役に立たない」のレベル感のすり合わせができていない
個人的には、私はあらゆる行為があらゆる行為の役に立つと考えている。
例えば、私は地下アイドルオタクを昔やっていたが、この経験は非常に機械学習エンジニアとしての活動に役立っていると思っている。
これはビジネスモデル、オタクやアイドルの心理、小数チームのマネジメント、toC向けビジネスの炎上ポイントなどを知ることができたからである。
しかし、地下アイドルオタクをするだけではもちろん機械学習エンジニアにはなれないし、しなくてもなれる。
このレベルの「役に立つ」を「役に立たない」と判断する人も多いであろうことは容易に想像がつく。ここのすり合わせができていないことが無駄な論争に繋がっていると考えている。
今回のチャレンジでは、kaggleが"複数の会社や部署をまたいでプロジェクトを成功させること"に役立たないという主張をする。
しかし、kaggleにはチームマージというシステムが存在する。このチームマージが"複数の会社や部署をまたいでプロジェクトを成功させること"の役に立つと考える人もいるかもしれない。
そこで、以下のように「役に立つ」のレベル感を追記してみる。これがこのチャレンジの終着点である。
大企業の中でAIプロジェクトを推進していくポジションの人間にとって、
Kaggle Masterになるレベルでkaggleに力を注いでも、実務の役には立たない。
なぜなら実務では複数の会社や部署をまたいでプロジェクトを成功させることが求められているからである。
確かにチームマージやホストとのやりとりという面でコミュニケーション力が鍛えられることは間違いないが、そのレベルの経験だとあと一歩足りないというのが実感である。
その理由は、kaggleに関わっている人はみな機械学習の導入に前向きだからである。機械学習の導入に前向きでない人を巻き込む経験がないと、役に立つとは言えないと考えている。
機械学習の知識が必要なのはもちろんだが、Kaggle Masterになるまでやり込む必要はないのではないか。
終わりに
このあたりまで気をつけて書けば、少なくとも互いを尊重した議論ができるのではないか。
ちなみに、今私はかなり納期に追われていて、現実逃避のためにこのブログを書いている。
ブログ執筆は納品の役に立たない。